還る (映画後捏造・エド→ウィン)




 燃えるような夕焼けを視界の中心に納めながら、エドワードはぼんやりと考えていた。


       死んだ自分の魂は、いったいどこに還るのだろうか、と。


 答えは死ぬまで得られないし、死んだとしても分かる保障なんてどこにもない。
 もしかしたら幼いころに知った真理の扉の向こうかもしれない。扉の向こうで母・トリシャが迎えてくれるかもしれない。 逆に、エドワードの肉体と魂を結ぶ精神が崩壊した瞬間にエドワードという意識がなくなって、何も感じなくなるのかもしれない。
 それは       神しか知ることができない領域だ。

 しかし、一介の錬金術師でしかない(なかった)エドワードは知りたいと思った。
 自分がどこに還るのか、を。
 否。
 生まれた世界に        アメストリスに還れるのか、を。


 肉体はどうしてもエドワードを錬金術が使えないこの世界に縫い留める。ある意味、錘のような役割を果たしているのだ。
 しかし、魂だけならばどうだろう?
 賢者の石の原料にだってなるのだ、人の魂は。その秘められたエネルギーは未知数で、不可能なことは何もないかもしれない。光よりも早く直進し、世界にまだ点在している 扉を、元いた世界に繋がる扉を抜けることができるのではないだろうか?


(絵空事かもしれないけどな・・・)


 ウラニウム爆弾は大西洋の底に沈めた。大西洋の底と言っても比較的浅瀬の海域であったし、頑丈な造りのケースに入っていたのだ、水圧に耐えられずに核爆発という 心配はないだろう。
 そしてそれは同時に、今いる世界での使命の終わりを告げていた。
 つまり、思い残すことがなくなったのだ。


(・・・・・還りたい)


 自ら命を絶って元の世界に還れるか検証しようとは思わないけれど。
 還れるものなら、還りたいと思う。


 眼を閉じれば、瞼の裏に浮かぶのは故郷の景色。
 そして、揺れる金髪       ずっと帰りを待っていてくれた、幼馴染。
 でもなぜか思い出すのは最後に逢ったときの大人の姿ではなくて、ずっとずっと幼いころの少女の姿なのだ。まるで最後に見た姿は大切に、エドワード自身ですら 妄りに思い出すことができないくらい大切に仕舞われてしまったかのように。


(やっぱ生きて戻るのが一番だけど・・)


 魂の欠片だけでもいい。
 最期に元の世界に還れるならば・・・
 懐かしい故郷に還れるならば・・・


 彼女の元に還れるならば・・・




 それ以上嬉しいことなど、きっとこの世には存在しない。

















fin.

















2007/10/23 up