ある日、昼下がりの執務室で 「うおっ!?」 「なんだぁ!?」 「は・・・・!?」 ハボック・ブレダ・ファルマンの悲鳴が鳴り響いた。 「あー・・・説明してもらえると助かるんスけど、中尉」 「フュリー曹長が迷惑な老人を拾ってきてしまったのよ」 「泣き付かれてしまったんです・・・」 「老人とこれに何の関係があるのですか?」 「曹長、説明してあげて」 「はい、えーと・・・僕が司令部前の大階段を上ろうとしたらあるお爺さんに声を掛けられまして・・そのお爺さんはあるお金持ちのおじいさんみたいなんですけど、お孫さんが パーティーかどこかでマスタング大佐を見掛けて一目惚れしちゃったらしくて・・・・・でも内気なお孫さんは一言も声を掛けることができなくて、その後も大佐のことを忘れ られなかったお孫さんが特注で作らせたのがこの等身大のマスタング大佐蝋人形なんだそうです」 「「「蝋人形・・・」」」 「そして、そのお孫さんが恋わずらいのために先日お亡くなりになったので、お孫さんが浮かばれるようにとお爺さんが『ぜひマスタング大佐に』と言ってこれを 持って来られたんです」 「ちなみにこの軍服は本物なのよ」 「お孫さんは秘密裏に軍服のサイズ測定のときのデータも手に入れて、大佐を本当に忠実に再現させたらしいです」 「怖ぇー・・・」 「ホントにな・・・」 「そうよね、軍の情報管理がこんなに甘いなんて・・・」 「「そっちですか!?」」 「他になにがあるというの?」 「いえ、あの・・・・そういえば、蝋人形を装った爆発物等の危険はないんですか?」 「ないわ。検査局にも調べてもらったし、老人の身元も蝋人形作製記録も裏が取れたから」 「そうなんですか・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「しかし、見れば見るほど大佐そっくりですな」 「ここまで似てんのに動かないのも逆に不気味だよな」 「いや、動いても怖いだろ」 「ドッペルゲンガーみたいですよね」 「うわぁ、大佐が二人・・?」 「サボリ魔、脱走常習犯、タラシ男がもう一人か」 「やめて下さい、ハボック少尉」 「冗談だよ、冗談! 一人だって持て余してるっつーのに、これ以上増えてたまるか」 「・・・・それにしてもどうするんですか? この蝋人形」 「そうねぇ・・・射撃の的というわけにもいかないものねぇ・・・」 「リアリティありすぎてさすがに気が引けますか」 「大部屋に飾られても困るんで、絶対やめて下さい」 「やっぱり?」 「勘弁して下さい」 「あ、どこかのお店でマネキンとして使ってもらうのはどうしょうか?」 「上官の顔が街中に晒し者になってもいいというの?」 「よ、よくないです! すみませんでした!」 「じゃあ所詮蝋なんですから、物資が不足してる地域に支援品として送っちまうってのはどうです?」 「物がない状況でいきなりこれが届いた場合、あなたたちならどうするかしら?」 「「「「見なかったことにします」」」」 「でしょう? それじゃ物資の救援にならないわ」 「確かに迷惑ですよねー」 「 「あ、本物の大佐」 「その呼び方はやめろ、不愉快だ」 「冗談っスよ、冗談」 「ですが、本当にどうしますか? この貴方そっくりの蝋人形」 「実は私も考えあぐねている」 「そうですか・・・」 「妙な怨念とか込められてたらどうします?」 「お、おおお怨念ですかっ!?」 「おまえが焦ってどうする、フュリー」 「すみません・・・つい・・」 「怨念など非科学的すぎるぞ、ハボック」 「そうっスかねぇ? やっぱどうするにしろ一回お祓いしてもらった方がいいんじゃ・・・」 「そのままついでに燃やしてしまうという手もありますな」 「「「「「・・・・・・・・」」」」」 「・・・やはりやめたほうがよろしいですか?」 「 「ファルマン、シャレになんねーよ」 「そうですよ! 怨念が残ってて、周りの物に燃え移ったら危ないです!」 「「「は?」」」 「そうね。怨念はともかく、引火の可能性があるのは危険だわ」 「まぁ、とにかく火はやめる方向で」 「じゃあどうするんだよ、コレ」 「・・・・・・大佐、分解できます?」 「は? き、君も怖いこと言うね・・・」 「何がですか。錬金術で蝋を構成分子に分解してはいかかですか、という意味です」 「あ、そう・・・」 「でも分解もビジュアル的に怖いもんがあるよなー」 「確かに。一気に崩れる感じでしょうか」 「一瞬で無に還る大佐、か」 「だからこいつは私じゃない!」 「んな細かいことでいちいち怒らんで下さいよ」 「 「でも本当に困ったわ」 「あ! ヒューズ中佐ん家に送るってのはどうっスか?」 「はあ!?」 「ダミー相手に自慢話してもらえば惚気電話が減るかもしれませんよ?」 「む・・・・そうか・・・」 「ダメです! ヒューズ中佐の家は絶対にダメです!」 「ちゅ、中尉・・?」 「エリシアちゃんが怖がって泣いたらかわいそうです!」 「リアルすぎて逆に不気味だもんな・・・」 「つーか中佐の奥さんにも迷惑だ」 「「「「「「うーん・・・」」」」」」 「マニアに売るとか?」 「それくらいなら自分の手で跡形もなく燃やす」 「でも結構な値段で売れそうですよね」 「でも買い手はよほど変わった人だと思うわ」 「中尉はいらないんですか? マスタング蝋人形」 「ハヤテ号のおもちゃにだってならないでしょ? いらないわよ」 「だれか引き取ってくれる人いねーかな」 「珍しいモン収集家みたいなヤツか?」 「「 「・・? どうされました? 大佐、中尉」 「君も同じこと考えたかね?」 「はい、恐らく」 「打ち合わせは・・・・・1時間半後か」 「そうですね。それまで決裁に励んでください」 「はいはい」 「え、二人だけなんで完結してるんスか!?」 「ん? アテがついたからもう仕事に戻っていいぞ、おまえたち」 「そうよ、貴方たちは何をしに来たの?」 「あー、追加書類来たんで」 「私は頼まれておりました資料を届けにきたのですが」 「伝言を頼まれまして・・・フュリー、総務の電話が一台調子悪いから見てくれ、だそうだ」 「あ、じゃあ行ってきます! 失礼します!」 「他に用事ないんで、俺らも大部屋戻ります」 「ああ」 「ご苦労さま」 ガチャ・・・・・・・パタン。 カツコツカツコツ・・・。 「 「お二人のお知り合いということは間違いないんですよね?」 大佐と中尉の知り合いで、珍品収集家で、大佐と1時間半後に打ち合わせがある人物。 「「「「 fin. 2007/9/27 up |