「あ、ホークアイ中尉・・今日届きましたマスタング大佐への手紙ですが・・・」
「あら、ありがとう。もらっていくわ」
「よろしくお願いします」

















   スーパードール・リザちゃん  1

















 司令部へなんて・・・仕事が送られてくることはあっても、個人的なお手紙が送られてくる人はめずらしい・・と思う。 だって個人的なお手紙を送ってくるような家族・恋人・友人なら、普通は個人的なアドレスくらい知っているはずだもの。 現に私自身、司令部に個人的なお手紙や贈り物なんて届いたことがないし、見ている限りでは同僚にも同じことが言える。

 だけど、良い意味でも悪い意味でも特殊な我らが上官(策士だけれど、ときどき無能な29歳、独身)のもとには 冗談抜きで毎日お手紙が届く。一日平均3.4通・・・もちろん上層部からの厭味たっぷりなお手紙は除いてある。お相手は ほぼ9割方女性(中には私には理解できない趣味の方からのラブレターもあるみたい)。ハボック少尉が本気で恨めしそうな 顔をした回数はもう両手では足りないんじゃないかしら・・・?

 大佐あてのお手紙が司令部に届くということは、つまり大佐のプライベートなアドレスが一般の方々にバレていないという ことで。どれだけ女性とのお付き合いが激しくても(一応)国軍大佐としての立場をわきまえているのでしょう。うっかり 世間に知られることにでもなったりしたら、それこそテロリストの恰好の的。それでは命がいくつあっても足りない、護衛をする 私たちの命が。

 というわけで、今日も今日とて送られてくるラブレターを執務室まで運ぶ役目に対する抵抗感も、今ではすっかり消え失せてしまった。

 「気になる手紙があれば検めてくれてもいいが」と冗談交じりで言われたのもずいぶんと昔になる。気になる手紙ってなんですか、 貴方が何時何処で誰と何をされようと関係ありません・・と呆れたけれど、可愛らしく純粋なラブレターに雑じってときどき 脅迫まがいのものが紛れ込んでいたりして、ヒヤっとしたりすることも事実。そしてそんな手紙を忠犬よろしく嗅ぎわけて しまう私がいることも事実。まぁ決め手は匂いではなくて字と封筒のイメージからの直感的な判断なのだけど。

 そんなときは事前に開封し、内容を検めさせてもらう。異常があれば信憑性を確認の上、大佐に報告。

 ・・・・まったく、あの上官のせいで余計な仕事がひとつもふたつも増えている。こっそりと溜息を吐くのも癖になって久しい。



 今日のお手紙は3通だった。
 廊下を歩きながら、一通ずつ宛名(差出人ではなく)を確認していく。

 一通目は流麗な文字で藤色の封筒。大人で落ち着いた感じの女性かしら?

 二通目は小さくて少し丸みを帯びた可愛らしい文字に、薄ピンクの花柄の封筒。・・・・ずいぶんと歳の離れた方からのラブレター ですね、大佐。

 そして三通目は           っ・・!?



「なに・・コレ・・・・」

 思わず声が零れてしまった。
 と同時に、気がつけば執務室に向って走り出していた。
 手紙を持つ手は震えるし、書類を抱えているせいで上手く走れない・・・けれど、早く中身を確認したいという思いで、 自然と足が前へ出る。すれ違う度に人に驚いた顔をされても気にしていられなかった。





 オフホワイトの便箋に、整った文字で綴られた Roy Mustang の宛名。
 よくある手紙のはず、はずなのに・・・・・・


 背筋が凍るような違和感は何なの!?


 それは純白の紙にインクが一滴落ちているというよりも、薄いグレーで一面塗りつぶされているような・・すべてが何かオカシイ と感じるものだ。
 整った文字は無機質で筆跡主の人柄を見せない。差出人は女性の名前だけど、本当に女性かどうかもわからない。
 唯一窺えるのは“神経質”そう、ということのみだった。



 私は主のいない部屋(今は軍議中です。サボリではないのでご心配なく)の扉をノック し、いつもとる間の半分しか待たずに執務室へとすべり込む。そして真っ先にペーパーナイフに手を伸ばした。





 なぜか覚えのある恐怖心に心臓がうるさいけれど・・私の中では軍人としての第六感よりも 副官兼護衛官としての忠誠心が勝る。今回も同じパターンね。


 本当にただ、それだけのこと。


















To Be Continued.

















2007/ 3/19 up