最初がインパクトでか過ぎてさ、絶対忘れられないね。 いつまでも、生き続けるから あれは国家錬金術師の試験が終わってホテルに戻ったときだったな。そのちょっと前に当時大佐がすんげー嫌なヤツってわかって、 なるべく会話しないようにしてたから大声に驚いちまって・・・・・・ 「ぃよお、ロイ!!こっちだ、こっち!!!」 向けた視線の先に、あの人が立ってたんだ。 「往来で大声を出すな、ヒューズ!」 「何だよ、お前の声も十分でかいって! 「ありがとうございます」 「おい、ヒュー・・・」 「で、ロイ、こっちは?」 「・・・今国家錬金術師の試験を受けてきた、エドワード・エルリックだ。こっちは一見そう見えないが国軍中佐のマース・ヒューズ」 「どういう紹介だよ!・・・優しいお兄さんのマース・ヒューズだ、ヨロシクな」 「・・・ヨロシクお願いシマス」 半ば強引に握手させられた手は大きくて、包まれるようだった。 「いやぁ、お前がエドワードか!話の通り小さ・・・」 「だれがチビかぁ!!!」 初対面にも関わらず人をチビ呼ばわりしたあの人に激昂したのは言うまでもないけど。 でも人の頭に手を翳して「お、禁句だったか。悪いな」って笑うのを見てたら怒りが溶けちゃってさ。 あの行為もいつもなら十分怒りを感じるはずなのに・・・タダ者じゃないなって思ったよ。 「・・・で、お前私服でのこのこと何しに来たんだ?」 「それがさ、エリシアちゃんがもう本当に可愛くて、幸せすぎて恐いくらい・・・」 「それはよかったな。それで何の用だ?」 「そりゃーお前とリザちゃんを俺ん家に拉致りに。エドワードももちろんいいぞ」 「その言葉に強引さが滲み出ていてお前らしいが、生憎今夜は予定があるんだ。すまんな」 「ナニぃ、エリシアちゃんとのご対面よりも大事な用事が在るってのかぁ?あ!さてはリザちゃんとデートだな!?」 「黙れヒューズ!!グレイシアさんへの出産のお祝いは明日東方に戻る前に行こうと思ってたんだ!」 「んだよ、それじゃ時間短いぞ?」 「電話の度に何時間も話を聴いてやってるだろう。それに長居しては夫人にも迷惑だし、子供にも良くないと思うが」 「そんなに長時間居座るつもりか!?厚かましいヤツめ。リザちゃんも何とか言ってやってよ」 「お前が言ったんだ!そして妙なところで中尉に話を振るな!!」 「わー、ロイくん妬きもち?だが心配しなくてもいいぞ。俺はグレイシアとエリシア一筋だ!!」 「いい加減人の話を聴けっ!!!」 いい歳して、往来で人目も気にせず何騒いでんだ?って・・・内心呆れたりもしたけど。俺と中尉を半分無視した遣り取りは 見てて厭きることはなかった。 不思議だよな。太陽みたいに明るく笑って でもその明るさも、あの人の強さから出たものだったんだって・・・今日解ったんだ。 苦しいこともツラいことも全部強さに変えていける人たちで、 あの人はそれを底のない明るさに、大佐は莫迦みたいな直実さに変えて、この国自体を変えていこうとしてた。 「 空はどこまでも蒼かった。まるで2人を祝ってるかのように。でもその蒼が泣き出しそうな色に見えたのは、 2人の過去と覚悟を少しだけ垣間見てしまったことがあるからだろう。 俺とウィンリィはある目的地を目指して、今、緑と冷たい墓石に埋め尽くされた地面を進んでいる。 アルはまた別の機会に行くからと言ってホテルに戻って行った。 今日は俺からも報告をしようと思って訪れたのだ。別に本人たちから報告があるだろうし、そもそも天国から見て賑やかに笑ってそうな 気もするけど。でも、俺の口からも伝えたかった。 ヒューズ准将の墓の前で。 マスタング少将とリザさんの結婚の報告を。 ウィンリィの方から准将と初めて会ったときの話を聞かせてくれって言ったのに、コイツの方が落ち込み始めた。 今日はこんな顔で会いにいく予定じゃなかっただろ? 「おい、泣くんじゃねーぞ」 「な、泣かないわよ!こんなおめでたい日に泣くはずないでしょ!」 ウィンリィの手で准将の愛娘と半分にしたリザさんのブーケが風に揺れてる。 俺の右手の献花も揺れていて、腕にペシペシと当たって妙な気分だ。鋼鉄の腕のころは全然気にしなかったのに、今は 茎を潰さないように、でも落とさないように加減するのが難しいことを体感してる。 「今日はすっごく幸せな気持ちになれたんだもの。それをヒューズさんに伝えなくてどうするのよ」 「そっか・・・・・・・・・」 やがて見えてきた白い石。俺たちの目的地。みんなから愛されたあの人が眠る場所。 「忙しかったんじゃねーのかよ・・・」 「えー、それでも来ちゃうのが友情なんじゃないの?」 静かに鎮座する飾り気のない白い花束。 送り主が誰か、なんて愚問だ。きっと今ごろグラマン大総統に弄られているに違いない人物と 本当は優しい夫人の二人で花を供える姿が容易に想像できるから凄い。 「やっぱ、あの人たちが先か」 「当然と言えば当然よね。ほら、私たちも行くわよ」 勢いよく歩き出したアイツの髪が風に攫われる。俺の髪より色素が薄いソレはまるで光みたいで・・・それを追いかけるように慌てて俺も歩き出す。 今日2人を祝いに来た人たちはみんな准将のこと、忘れてなかった。 まるで「出張に行ってていない」みたいなノリだった。グレイシアさんも、マスタング少将も、リザさんも。 准将のこと知る人全てがそんなカンジだった。 でもそれは決して准将の死を受け入れていないからじゃない。 みんなの中で准将が生きてるから、生き続けてるからなんだ。 准将、俺も忘れない。どこまでも明るく、優しく、親身になって接してくれた准将が今の俺を創ってる一つの要因だから。 ・・・だから。 あの蒼の向こうでも笑顔でいてほしい、と、そう思ったりするんだ。 fin. 2006/11/8 up |