ぬくもりを乞う


 そのときC.C.の頭を過ぎったのは、『ぬくもり』という言葉だった。
 あついのではなく、ぬくいのだ。ヒトの体温など病気でもない限り他人とでさえそう何度も変わるものではないから、当然と云えば当然である。
 しかし他人のぬくもりを忘れるほどに触れ合いに欠いた日々を過ごしてきたC.C.にとって、その温度は懐かしさを通り越して新鮮ですらあった。
 振り向かされた上半身に合わせるように下半身を捻ると、体温を感じられる面積が増える。そのことに不思議と安心して、C.C.はおずおずと腕を伸ばし、       ぬくもりを与える存在を抱きしめ返した。
 強い力ではない。腰にゆるく腕を回している程度だ。しかしC.C.の細い身体を抱く腕の力はただの抱擁から拘束の域に達した。
 息苦しい。だが、その苦痛が却って相手の存在を確かにする。
 やさしくも哀しいぬくもりを感じながら、C.C.はひっそりと自問を繰り返す。

 なぜ今の今までこうしなかったのか。
 男が生命の期限を定めた、今に至るまで。


(・・・・・・・・・ルルーシュ)


 小型シャトルとは違ってアヴァロンに揺れはなく、薄暗い間接照明だけが頼りの寝室は静かで。
 一言でも発してしまえばこの抱擁も泡沫のように消えてなくなる気がして、C.C.は口を噤んだまま瞼を下ろした。






『 ぬくもりを乞う 』


2018/ 1/14 再up