こころ灯す


 貴女はいつも哀しそうな貌をしているね、と云われたことがある。
 あれはどの契約者だったか。
 シチュエーションどころか何と答えたかさえ覚えていない。それなのにその言葉だけは強く心に焼き付いて、いつも不意を衝いてはC.C.を責めてきた。
 笑えていない。
 感情を求められても応えられない。
 契約者でありながら傍観者にしかなれない。
         そんなとき、痛烈に感じる。不変の魔女は、やはりヒトとは違うのだ、と。


(・・・・・それに比べて)


 今度こそ最後になるかもしれない現在の契約者は、表情が非常に豊かな男であった。よくもまぁそこまで表情筋が動くものだと感心するほどに。
 ベッドに横たわったC.C.はパソコンの画面を睨み付けている男の横顔をじっと凝視した。
 この仮初の箱庭は生活する上で快適だが、同時にひどく退屈でもある。その中においてこの契約者の百面相を観察することは、ささやかだが数少ない娯楽のひとつだった。
 今日も今日とて、機械相手にあの形相。
 やはり見ていて飽きない。そんなことをC.C.が考えていると、唐突にロイヤルパープルの瞳と眼が合った。
 表情は相も変わらず険しい。

「・・・・・・・・・・・・・・何を笑っている」
「え・・?」

 それは思い掛けない指摘だった。
 咄嗟に言葉を返すこともできず、C.C.はただ目を瞠る。それを見て何を思ったのか、ルルーシュは舌打ちをひとつ残してパソコンに向き直ってしまった。
 一体何だったのか。
 云われたことを反芻して、C.C.は瞼を下ろした。衝動を抑えることができず、抱えたぬいぐるみに顔を埋める。
 笑っている、とルルーシュは云った。ということは、少なくともルルーシュにはそう見えたのだろう。確かに指摘を受けるまでは娯楽と思ってルルーシュの貌を眺めていたわけだが、まさか顔の 筋肉が緩んでいて、あまつさえそれをルルーシュ本人に気付かれるとは。
 誰もが、C.C.自身でさえも感知しなかったものを拾い上げていく存在。それに悔しさよりも面映ゆいような気持ちにさせられるとは思ってもいなかった。

 ルルーシュからいくつ『はじめて』を得ただろう。
 これからいくつ得るのだろう。

 この男なら、ルルーシュならば、積年の願いを叶えてくれるのではないか      そんな期待が高まって、C.C.の胸は歓喜に震えた。






『こころ灯す』


2014/ 9/ 7 修正して再up