「 「・・・ぇ?」 ハッと気付くと、求めた男が目の前にいた。 しかし妙に薄暗くて、顔がよく見えない。生暖かいもので身体を包みこまれているような、甘ったるいような空気も妙だ。 「大丈夫か? ずいぶん魘されていたが・・」 『魘されていた』 今は夜で、ここはベッドの中で、まさか今までのが全部夢だったとは。 あまりにリアルすぎて笑うことすらできない。夢に見るということは心のどこかで別れを意識しているということで、ルルーシュと居るのを苦痛に感じる日が来るかもしれないと恐れている自分自 身にC.C.はショックを受ける。 黙り込んでしまったC.C.に何を思ったのか、ルルーシュが頬に触れてきた。 乾いた指先が消していく、濡れた感触。涙まで流していた事実を知ってしまったものだから、これで何もなかったとは云えなくて、突っ込んで聞かれるのは承知の上でC.C.は「大丈夫だ」と答えた。 「悪い夢だったのか?」 「・・・・・」 あれが悪い夢だとするならば、今まで見た夢の中で一番最悪な悪夢だろう。 ルルーシュの胸に額を押し付けて小さく頷けば、背に腕が回される。その力強さに心がほろりと綻んで、「お前と別れる夢だった」と思わず零してしまった。 「・・・俺と?」 その、訝しむ声色で失言に気付く。 夢に見てしまったものは仕方ないが、それを正直に教える必要なんてなかったのに。 「なんだ、夢の中の俺はお前に愛想を尽かされたのか」 「なっ、・・違ッ・・・」 「逆はありえないだろう?」 「・・・・は?」 『逆はありえない』とは、ルルーシュがC.C.を見限ることはない、ということだろうか。 なんだそれは。それこそ解らないじゃないか。 不安を払拭するための出任せならばいらないとC.C.はルルーシュを睨めつけるが、自信に満ちた偉そうな微笑は揺らがない。そして云うのだ、あっさりと。 「俺がお前に飽きる前に、お前がピザに飽きてると思うが?」 C.C.の嗜好を逆手にとった、そのセリフ。 確かにピザと出会ってこの方、ピザに飽いたことなど一度もないが。 何故そこでピザを引き合いに出すんだと怒りを覚えたC.C.は、しかし言葉に詰まった。 「ピザと同じくらい好きだぞ」などと云ってルルーシュを揶揄したり、「ピザ」と連呼して偏愛し続けているのはC.C.なのである。 何だか急に馬鹿らしくなったC.C.は全身の力を抜いた。まるでそれを待っていたかのようにルルーシュがC.C.の後頭部に手を添え、そっと撫でてくる。 神経が昂って到底寝付けそうにないが、それでも目を瞑ったのは、形だけでも休む素振りを見せないとルルーシュが休まないことを知っているからだ。 別れはいつか訪れるかもしれない。 しかし、その“いつか”と向き合うのは今ではない。 限りない生の果てに何が待っていようと、今はルルーシュだけを感じていたい。 心地よい体温に包まれて緊張が解れてきたC.C.は、もう少しだけルルーシュに身を寄せた。
『WORLD END』 2011/10/11 修正して再up |