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しあわせ の ゆりかご 遠慮を知らずにジリジリと肌を焼く陽光に嫌気がさして、荷馬車の荷台から御者台に移動したのは40分ほど前のことである。そして、一面の緑を貫く一本の細道が蛇行して形を変える他は、同じ ような風景が延々と続く現状に退屈してきたのが30分くらい前のことだろうか。 いいかげん馬の鬣を眺めるのも飽きてきたC.C.は、隣で馬の手綱を握る男をチラリと見遣った。 さすがマリアンヌの血を引いているだけあってか、運動ではあまり揮わないルルーシュも乗馬は得意らしく、背に跨って馬を駆るのみならず荷馬車の御者としても非常に優秀だ。二頭の足並み を乱すことなく進める技術はたいしたもので、おかげでウトウトと船を漕いでも御者台から急に投げ出される心配はなさそうである。 荷台で横になったほうが楽ではあるけれど、特等席を空けるのも惜しい気がして、C.C.はそのまま目を瞑った。 肌で感じるそよ風。 緑の青臭さと、馬の動物臭さ。 尻からゴトゴトと伝わる荷馬車の振動。 すぐ傍に在る、ルルーシュの気配。 僕と生きてほしい、とか。 私が必ず君を救ってあげる、とか。 都合のいいことばかり云ってC.C.を手に入れようとする者は多かった。 でも、『お前が魔女ならば俺が魔王になればいいだけだ』 などと、・・・C.C.の業から眼を逸らさず、心に沿ってくれたのは 上体を横に傾けて、コテンと頭をルルーシュの肩に乗せてみる。 強く張った男の肩がひどく安心感を誘って、まるで当たり前のようにルルーシュが傍に居るキセキに、今さらだけれど感謝した。 「C.C.・・?」 ルルーシュが様子を窺っているのが気配で伝わる。 しかし頭をあずけて瞳を閉じているC.C.を見て、眠っていると判断したのだろう、ルルーシュはそれ以上何も云わずに肩を貸してくれた。 静かに、ゆっくりと荷馬車は進む。 C.C.の胸は、幸福でいっぱいだった。
『しあわせ の ゆりかご』 TURN25の荷馬車シーンより 2011/ 4/26 修正して再up |