停滞恋線 ルルーシュの懐事情を考慮することなくピザを偏愛し続けているところ然り、部屋を散らかし放題なところ然り、再契約を交わしてルルーシュの部屋に戻って来たその日から、C.C.は何事もな かったかのように過ごしている。 相変わらずベッドに寝転がりながらピザを頬張っているC.C.を横目で眺めて、ルルーシュは不満の声をグッと喉の奥に押し戻した。 ルルーシュとC.C.は、血族ではない。 だから親子でもなければ兄妹でも姉弟でもなく、法的な繋がりによる姻族の関係も一切ない。 夫婦など、言語道断。 恋人でもなく、片思いの相手でもなく、友人やクラスメイト、先輩と後輩という関係のどれでもない。 しかし、道ですれ違っても記憶に残らないような、まったくの他人でもなくて。 苦しまぎれに知人と表現するには物理的な距離が近すぎる。 だからC.C.を部屋に匿う理由として、ルルーシュは『共犯者』という単語を云い訳のように使ってきた。 同じ罪を犯したわけでもなければ、願いの終着点が同じわけでもない。 ただ、秘密を共有しているだけ。 互いを利用し合うだけ。 それだけのはずだったのに、 表面的にしか関わらないはずだった共犯関係は、今や確実に変質している。 そうでなければ、マオの許へ行こうとしたC.C.に「行くな」と命令するはずがない。 情報の漏洩を防ぎたいのなら、ルルーシュに関する一切のことを誰にも話すな、と命令すればいいだけの話だ。なのにあえてC.C.を手元に引き留めようとしたのは、マオに渡したくないという 願望があったからに他ならないだろう。 ルルーシュも頭の片隅では解っている。 だが、契約だと云った言葉の通り、『共犯者』という関係に拘り続けていた。 「・・・・・C.C.」 ルルーシュの中でC.C.の存在感は日増しに大きく、しかし希薄になっている。 眼の届く範囲にいないと違和感を覚える。 でも、傍らに居るからといって意識することはない。 そんなC.C.のことを『共犯者』以外の何者でもないと認識し続けるのは、そうしなければ共に居ることさえできないと、本能的に悟っているからなのかもしれない。 「なんだ?」 もし仮に『共犯者』以外の関係を当て嵌めるとして、適当なものが見つからないというのもこの問題を放置している大きな原因のひとつだが。 C.C.との関係についてあれこれ考える時間があるのなら、ブリタニアを破壊する為の戦術・戦略を練り上げ、ナナリーの幸せを考え、もしくは家事のひとつでもこなしていた方が遥かに有意義だ とルルーシュが思い込んでいることも大きかった。 「 だから、今日も代り映えのない小言が口を衝いて出る。 曖昧な関係であるがゆえに招いてしまう悲劇を、このときのルルーシュは知らないのだ。
『停滞恋線』 2010/11/ 7 修正して再up |