おおきな て





 ぼんやりと、目が覚めた。
 正確な時間は分からないが、まだ夜明け前だ。辺りはまだ薄暗い。なぜ目が覚めてしまったのか考えて、昼間にうとうとと転寝をしてしまったことを思い出した。失敗したな・・、などと心の中で 呟けば、自然と肺から空気が押し出される。
 そこでようやくC.C.は気が付いた。背後から抱きしめるように伸びている腕の存在に。
 横向きに伏せているC.C.の、脇の少し下を通って回されたルルーシュの腕。そこまで重くもないが、確実に肺を圧迫しているだろう。目が覚めたのはこれの所為か・・? と疑って、しかしC.C.は 口元を緩めた。出会ったころのふたりでは到底考えられないことだが、こんなふうに抱き枕扱いを受けて眠ることも今ではめずらしくなくなったからだ。
 しかし、それにしても・・とC.C.は思う。
       胸のふくらみを包み込むような形で落ち着いている手は、いかがなものだろうか。
 もちろん、ルルーシュにそんなつもりはなく、適当に腕を回したら偶然こうなってしまったのであろうことは分かっている。目が覚めなければC.C.だって気付かなかったことだ。
 しかしC.C.は目が覚めて、気付いてしまった。思うところがあれば、なおさら気になる。
 なぜこいつの手はこんなに大きいんだ・・と、C.C.は悔しさ混じりの呟きを零した。

 ルルーシュの手は大きい。
 男女の体格差もあるし、そもそもルルーシュとC.C.の間には身長差もあるのだから、手の大きさがずいぶんと違っていても不思議はない。それはC.C.もよく理解しているし、悔しくも何ともなかった。
 だが、いくらルルーシュの手が大きいからといって、胸が掌にすんなりと収まってしまうのは些かC.C.のプライドを疵付けた。決して小さいわけではないのに、男の手の中に収まってしまう大きさ だと言われたら、まるで小さいようではないか・・と、そんなことを秘かに気にしていたのだ。

 悔しさを紛らわすためにルルーシュの手に触れてみる。水仕事をする割には荒れてない、きれいな手は、C.C.のそれよりもほんのりと暖かかった。
 緩く丸まった指を押し広げて手を重ねてみると、大きさの違いを改めて実感する。まるで女性のような、すらりとした形の手だけれど、掌も大きいし、何より指が長い。その長さの所為で細く思わ れがちな指は、実際はC.C.の指よりもずっと太くてしっかりとしている。

「・・・・・・」

 なんだか面白くなったC.C.は、今度は手首を辿って腕に触れてみた。
 やはり細い。・・・けれど確実にC.C.の腕よりは逞しいし、柔らかさの欠片もない、“ 男 ”の腕だ。
 十数年前まではマリアンヌの腕の中ですやすやと眠っていた稚児が、今ではC.C.を抱き竦めて眠っているのだから、人の成長とは早いものである。そんなことをしみじみと実感したC.C.は感慨 深さに瞳を閉じた。すると、心が凪いだ所為か、再び眠気が襲ってくる。
 原始的な欲求に逆らう気など元より持たないC.C.は、暖かい腕に包まれながらゆっくりと夢の中に旅立って行った。





 だから、C.C.は知らない。
 C.C.がもぞもぞと動き出した時点でルルーシュが目を覚ましていたことも、彼が声を掛けることすらできずに彼女の行動を見守っていたことも。

「・・・今のは一体・・何だったんだ・・?」


 C.C.の行動を理解できなかったルルーシュがそれから一晩中寝付けなかったのは、また別のお話である。




  第9期拍手 (12月30日〜2月5日)

  体格差萌え!な拍手ssでした(笑)