とある皇子と魔女の物語 epilogue




 己のルーツに特異性を持たせようとすることは、人間という生き物の行動として不思議なことではない。支配階級であれば尚更、己の行使する権力に正当性を 持たせたがるものだ。
 ブリタニア皇族においてもそれは同様だった。
 彼らがブリタニア大陸に進出する遥か昔よりこの地を治めていた王族がいた。移民であるブリタニア人たちは彼らの土地を奪い、その正当性を示すために自らを神、相手を悪と位置付けた。 それが金色の獅子の伝説であり、神聖ブリタニア帝国の国旗に描かれた2頭の動物が示す、隠された歴史である。




 血族を恨む皇子と、王族の血を引く魔女。
 本来であれば敵となるふたりは出逢い、そして惹かれ合った。
 あるいはひとつの箱に雌雄のネコを入れておくと自然と番になるように、互いしか信頼できる相手がいなかったから惹かれ合ったのかもしれない。
 しかし、だからといってふたりが通わせた想いの強さを一体だれが否定できるだろうか。


 男は女を愛した。
 女は男に恋をした。


 もしも閉ざされた世界などではなく、第三者が恋愛感情を抱いて接触していたら、などという仮定の話など、すでに起こった事実の前ではまったく意味を成さないことである。










 さて、ふたりが再び巡り合ってから6年後、神聖ブリタニア帝国は突如として崩壊する。
 その理由も経緯も、何ひとつとして後世には伝わっていない。




 皇子と魔女のその後もまた、すべてが闇の中である。












『とある皇子と魔女の物語 epilogue』




2011/10/25 up