助け出されて斑鳩に戻ってきてみれば、予想外の変化が待っていた。
 まずひとつめは、久方ぶりの自室にピザ女が居座っていたこと。
 ルルーシュと喧嘩でもしたのかと訊いてもC.C.は「違う」としか答えない。都合が悪いときには黙秘を貫くけれど、嘘を吐くような女ではないから、 本当に喧嘩ではないのだろう。・・・・・たぶん。
 じゃあ何で、と訊いても答えてくれないけれど。
 必要以上にふたりだけの世界を見せつけておいて、今さら意見の不一致とか倦怠期もないわよね、と勝手に想像していた。
 しかし、ふたつめ。C.C.を引き取りに来てもらうために訪れたゼロの部屋に、なんとシャーリーが居たのだ。
 これには本気で驚いた。
 ブラックリベリオン以来の再会だから、かれこれ1年は会ってなかっただろうか。シャーリーも驚きを隠そうともせず、しかし 駆け寄ってきてハッキリと云った。


 私にもルルを守らせて、と。


 私が守りたいのはルルーシュじゃなくてゼロよ、とか。騎士団の本拠地にブリタニア人がいたら危ないじゃない、とか。反論したい気持ちはあったけれど、 シャーリーの瞳があまりに真剣だったから是と答えることしかできなかった。
 見知らぬ空間にたったひとりで、シャーリーも心細かったんだと思う。
 特に、ルルーシュが滅多に部屋に戻らないことが不安だったみたいだ。
        そして、例のピザ女。


「あの子・・・ルルの何なのかなぁ?」


 知りたくて堪らないけれど、でも聞きたくないような・・・、そんな感情がまる解りの貌でシャーリーに訊かれて、さすがにカレンも困った。 そんなこと、カレンだって本当のところを知りたいくらいだ。だから「さあ・・? 本人たちは『共犯者』って云ってたけど」としか云えなかった。 何の共犯なのか、カレンもまったく把握していないけれど。
 しかし、解ったこともある。
 C.C.がカレンの部屋に身を寄せている、その理由。
 たぶん、C.C.はルルーシュとシャーリーが一緒にいるところを見たくなかったんだ。本人は否定するだろうけど、C.C.は絶対にルルーシュのこと好きだから。
 しかし理由が解ったところでカレンにできることは何もない。
 また会いに行くとシャーリーと約束して、斑鳩の簡単な内部構造と自分の部屋の場所を教えて、何かあったら連絡するように伝えて、そのときは一応ゼロの部屋を 後にしたけれど。


          それがまさか本当に部屋に来るなんて思ってもいなかった。






「うそッ・・シャーリー!?」


 こんな時間に誰だろう、と思ってインターホンに出たらシャーリーだった。
 急いでドアのロックを解除する。しかしハッと気付いてしまった。C.C.がベッドに転がっているのだ。なんで私が気を使わなきゃいけないのよ、と思わなくもないけれど、 気付いてしまったものは仕方ない。だけどシャーリーを部屋に入れないのはもっとマズい。
 ドアの向こうのシャーリーは少し青ざめていた。
 さすがに日本人ばかりの斑鳩の中を歩くのは怖かったんだろう。走ってきたのか、息が少し上がっている。よろけた身体を支えると、震えているのが解った。


「ちょっと、大丈夫?」


 どうしてこんな無茶をしたのか。呼んでくれたらよかったのに、とカレンは思った。
 しかし当のシャーリーはカレンを見ない。
 視線を追えば、そこにいたのはC.C.だ。


「・・・・・・え?」


 C.C.はC.C.でシャーリーの訪問にまったく関心がないらしく、ベッドに横たわってボーっと天井を見上げている。身体の上に乗せたぬいぐるみがシュールというか何と いうか、とにかくちょっとはコッチ見なさいよと云ってやりたくなるくらいの無反応ぶりだ。・・・・あるいは、わざとらしいくらいC.C.っぽい反応と云うべきか。
 だけど普段のC.C.を知らないシャーリーは震える声でC.C.に話し掛ける。


       C.C.、さん・・・・・・・・ッ、行ってください。ルルが、・・・ルルが呼んでます」


 え、ルルーシュ戻ってきてるの? というのがカレンが一番に思ったこと。
 蓬莱島に来てからはニッポンと行ったり来たりの生活をしているルルーシュだから、零番隊隊長であるカレンですらゼロの予定を把握していない。 この前偶然シャーリーに会ったときがいい例で、あのときはルルーシュが部屋にいると期待して行ったのにいなかったのだ。
 ルルーシュが帰ってきてる。その事実を前にカレンの鼓動は早まった。
 シャーリーを連れ込んでるなんて、一体どういうつもりなのか。C.C.のことはどうするつもりなのか。C.C.を追い出すのは構わないが、 自分の部屋に来て迷惑してるからどうにかしてほしい等々、云いたいことはポロポロと溢れてくる。
 しかしカレンが一番気になったのは、C.C.がルルーシュのところに行くのかどうかということだった。
 C.C.はシャーリーの言葉にも感心を示さず、顔をこちらに向けただけ。琥珀色の瞳に感情の起伏は見られない。これはルルーシュに会わないどころか ベッドから動かない気だと解る。
 シャーリーも同じように感じたのだろう、拳を握る手に力が入ったように見えた。




「あなたのこと呼んでるのッ! お願い、行って!!」












2012/ 1/10 up