背にひどい違和感を覚えた。
 有体に云えば、       “ くすぐったい ”だ。
 得体の知れないものが服の中でゴソゴソと這い回っているような感じがする。思わず身を捩ったが、くすぐったさが余計増しただけだった。
 ついに我慢ならなくなったC.C.は、黒衣のファスナーを臍のあたりまで下ろした。


「・・・ん、ッ」


 腕を背に回し、インナーの中に手を突っ込む。犯人を探して手を這わせてみたものの見つからず、しかしムズムズする感覚は消えないものだから、 今度は上から腕を回し、インナーの襟から手を差し込んでみた。
 身体は決して硬くないが、ハイネックの襟では腕を入れると首が締まって苦しい。ムズ痒いのも相俟って悶えるように身を震わせていると、ようやく犯人が指先に触れた。
 引っ張り出したのは、髪の毛だ。
 頭皮にくっ付いているときはどれだけ肌に接しようと痒くも何ともないというのに、これが抜け毛になっただけで、どうしてこうも存在を 声高に主張するのだろうか。・・・というか、銃で眉間を撃たれても死ねないくせに、こういうことろだけ人間の感覚が残っているなんて、納得いかない。
 釈然としない思いを抱えながら、C.C.はひとつ息を吐く。
 しかし騒動も終結したことであるし、毛を適当に放りながらモニタに視線を戻すと、液晶の向こうに頬を染めて明後日の方向を向くルルーシュの姿があった。
 そうだ、定時連絡中だったのだ。
 コイツは何を赤くなっているんだ、と考えたところでC.C.は自分の格好に思い至った。白のインナーが捲れ上がり、かなり際どいところまで胸が見えている。


「・・・・・・・エロガキが」
『なッ、・・』


 着衣を正しながら云えば、経験が圧倒的に不足しているくせに自尊心だけは一人前の男は過剰に反応して見せた。
 だからボウヤだと云うのだ。
 ブツブツと文句やら小言を繰り返すルルーシュに「ハイハイ」といいかげんな返事をする。それにまたルルーシュが食ってかかる悪循環。
 通信時間が延びていることに、この男は気付いているのだろうか。
 成長しないボウヤだな、と呆れたが、しかし一方で安心している自分も自覚していたものだから、その不可解な心中をどうにかしたくて、C.C.はモニタの電源に手を伸ばした。












2011/11/10 up