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   夏の華




 かつてブリタニア帝国の植民支配を受けた歴史をもつ合衆国日本は、旧中華連邦や旧EU諸国と比べると、生活の端々にブリタニアの影響が見てとれる。 しかしそれは生活の利便性を合理的に追求した結果であって、日本人たちが自らの文化を誇り、大切にしていることは昔も今も変わりなかった。
 そんな彼らが守り続ける文化のひとつ・温泉。


        温泉というのは、どうしてこうも温まるのだろうか、と。


 シャワーだけで済ませたときとはまったく異なる、芯からホカホカと温まった身体で旅館の廊下を歩くルルーシュは、肌に当たる冷房を心地よく受け止めながら 感慨深く物思いに耽っていた。






 ゼロ・レクイエム後200年の間に何度か日本を訪れたが、温泉旅館に泊まるのは初めてである。
 ・・・というのも、ルルーシュが『温泉』というものに抵抗があったからだ。
 他人の眼がある中、裸でひとつの浴槽に浸かれるか、とルルーシュは拒絶しまくっていた。
 第一、首元に根付くコードの文様と、胸を横一文字に走る刺し傷の痕は誰かに見られていいものではない。だから・・、とこれまでC.C.を説き伏せてきたのだが、 この度ついにC.C.の不満が爆発したのである。
 曰く、「人工皮膚をフル活用すれば問題はない! 細かいことは気にするな!」、と。
 もちろんC.C.の一喝ですべての不安不満抵抗感が払拭されるはずもなかったが、どうも嫁のおねだりに弱いルルーシュは渋々ながらも温泉旅館に宿をとり、 しかし実際に湯に浸かっているうちにどうでもよくなってしまった。
 裸であることを誰が気にするでもなく、それぞれが思い思いに湯に浸かっているのだ。
 ブリタニア人の白い肌は多少の人目を惹いたものの、国交関係が良好となり旅行・観光目的のブリタニア人が温泉でも多く見られる昨今では不快感全開の眼で 見られることはなかった。むしろどこぞの髭男を思い出させる風貌の中年男が「温泉ってのはイイもんだろ!」と、いきなり肩を組んできて、その馴れ馴れしい 態度に引いたくらいだ。
 温泉とは不思議である。いとも簡単に、人を無防備な姿にしてしまうのだから。






 ふぅ、とルルーシュは息を吐いた。
 やはり、逆上せ気味の頭は考え事に向かない。
 目的地に着いたのを機に思考を切り替えようとしたルルーシュは、しかし何気なくドアノブを捻った瞬間に眉を跳ね上げた。鍵が掛けられていると思った扉が 入る者を拒まなかったら、思考なんて否が応でも切り替わるだろう。
 呆れて物も云えない。
 鍵はC.C.の手元に残してきた。ルルーシュが部屋を出たらすぐに鍵を掛けて防犯するよう、そして部屋を空ける際はルルーシュのことなど気にせず鍵を掛けて出るよう 云い置いてきたはずなのに、どうしてこうも無防備なのだろうか。
 きっちりと内側から鍵を掛け、ルルーシュは式台に足を掛けながら襖を開ける。
 そのさらに奥の襖の向こう、畳敷きの和室では、浴衣姿のC.C.が緑茶を煎れているところだった。
 万が一ルルーシュの正体が露見したとき、機動的に動けるようにと、あえてずらした温泉の時間。一足先に温泉を満喫してきたC.C.は、ルルーシュの帰りを知り、「おかえり」と 云って視線を寄越してきた。やはり危機感はゼロらしい。
 小言のひとつでも云わないと腹が治まらないルルーシュは口を開きかける。
 しかし       ・・・




「なんだお前、その格好は」




 ルルーシュの姿を眼に留めたC.C.の批難じみた声が先に響いたものだから、出掛けた言葉は喉の奥で永遠に封じ込まれてしまった。
 代わりに出たのは、「仕方ないだろ」というぶっきらぼうな返事。
 それもそのはず、浴衣など着慣れないルルーシュは前身頃の合わせが肌蹴ぎみだったのだ。帯でなんとか固定しているから下肢は隠れているが、 上は腹まで見えそうで、帯もまるで女のように蝶々結びである。
 仕方ないと云ってみたものの、普段から服を着崩すということをしないルルーシュであるから、決まりが悪いのは本人が一番自覚している。 だから、面倒だが着直すか、とC.C.に背を向けて帯を解いたところだった。嫁が正面に回ってきて、膝をついたのは。


「・・・・C.C.?」
「手伝ってやるよ」


 云うなり浴衣の中に手を突っ込んできたC.C.に、ルルーシュは「ほわぁッ!」と動揺の声を上げたのだが、今さらそんな奇声など気にも掛けないC.C.は右の衽を掴んで キュッと引っ張った。
 途端に張る、浴衣。
 腹も胸もしっかり隠れたかと思えば、間髪入れずにC.C.は後ろへと回り、帯を締めにかかる。
 ウエストではなく腰で固定された帯は1分と経たずに完成した。手探りで確認してみれば、蝶々結びではない。


「貝の口だ」


 聞いてもいないのにC.C.が答える。見下ろせば、仕上げに裾を引っ張って調整しているらしいC.C.がいて。
 不覚にも胸が高鳴った。
 ルルーシュに対してはとことん傍若無人なC.C.が、まるで献身的な妻のようではないか。
 おはしょりもできない、半幅帯でもない、旅館で使われる簡易的な浴衣であるのに、楚々とした印象を抱かせるC.C.の浴衣姿。胸元に乱れもなければ、裾にも隙がない。 その一方で緩く結いあげられた若草色の髪が甘やかに解れて、水分を含んだ毛先がしっとりとした情緒を垣間見せている。
 廊下ですれ違ったどの日本人女性たちよりも清楚で、しかし艶やかな女に、身体の奥からじわじわと熱が募った。


 絡め取って、乱してやりたい         そんな欲望に呑まれるのは、時間の問題で。




「なあ、これから花び、ッ!? ちょっ、・・ル、・・・ルルーシュッ?」




 夕食で部屋を空けている間に女中が敷いた布団へ、女の華奢な身体を転がした。ベッドとは多少寝心地が異なるのだろうが、C.C.を受け止めるには充分だ。


「待っ・・! 花火大会はどうするんだっ!?」


 急に組み敷かれて慌てたC.C.がルルーシュの肩を押し返す。
 手首まで覆っていた袖がするりと落ちて、細い腕が顕わになった。抵抗したはずみで割れた裾から覗く膝の白さもさることながら、 足首に至るまでのキュッと締まったラインがいっそう女のしなやかさを引き立て、男の劣情を煽った。
 完敗だ、見事なまでに。


「また来年にでも来ればいいだろう」


 ニッコリ、とでも擬音が付きそうな笑みを顔中に張り付ければ、C.C.は途端に眼を眇めて「お前だって楽しみにしてだじゃないか、花火ッ!」と暴れ始めた。 かえって裾が乱れて内腿が見え隠れしていることに気付いているのか、いないのか。
 1時間以上続く打ち上げ花火を鑑賞できるという、『納涼花火大会』を楽しみにしていたのは事実だが・・・・・男ならば、不特定多数の観衆のために誰かが打ち上げた大輪の華より、 自らの手で花開かせた、自分だけの可憐な華を愛でていた方が楽しいに決まっているだろう。 特にルルーシュという男は、『自ら』という部分にものすごく情熱を燃やす男なのだから。
 200年以上傍にいるくせに、艶っぽい機微に関しては一向に学習しない女の太腿に手をすべらせ、湿った吐息と熱い舌先を赤く染まる耳に忍ばせたルルーシュは、 そっとやさしく囁いた。






「代わりにお前が狂い咲けばいい・・・俺の腕の中でな」












『夏の華』


フィギュアのエロかわ浴衣C.C.も捨てがたいが
チラリズムな浴衣C.C.も捨てがたい!の巻




2011/ 9/12 up