片道切符でいい




 抱きとめた身体があまりに柔らかくて。
 頼りなくて。
 悪態を吐きながらすぐに突き放す、なんてことができなかった。
 今まで誰にも抱いたことのなかった欲を覚えてしまったのは、護るべき存在でも、偽りを介した存在でも、使役する存在でもない、 まったく対等の存在だから         だから、何の歯止めも掛からずに身体が反応してしまったのだろう。
 C.C.は腕の中に納まったまま、身じろぎもしなければ声も発さない。
 そうこうしているうちに深みに嵌まって、引き返すという選択肢が霞んで消えていく。


 C.C.の前ではいつだって感情を曝け出していたのだから、今ここで行動に移したとしても関係が壊れることはないだろう。
          だが、何かが確実に変わる気がした。
 恐怖は感じない。
 感じるのは、先に待つモノへの抗い難い魅力だけだ。
 後に呪わしく思うとすれば、欲を制御しきれなかった脆弱な理性くらいか。


 詰めていた息を細く吐き出す。
 たったそれだけのことで華奢な身体は強張る。
 拒まないお前が悪い、などと最悪なセリフを唇の内側で繰り返し唱えながら腕の拘束を緩めて、小さな頤にゆっくりと指を掛けた。












『片道切符でいい』




2011/ 2/13 up