それは唐突の出来事だった。 正真正銘、嘘偽りなく唐突。 少々無骨だが、男にしては驚くほど整った長い指がいきなり顎を掬い上げて、何の言葉も発せないうちに唇が降ってきたのだ。 ほんの一瞬の出来事だった。それこそ、瞬きのようにアッという間の。 僅かに傾けられた秀麗な顔の、長さが際立つ睫毛がゆっくりと離れて、その下から現れた紫水晶がじっと私を見つめるから、 そこで初めて「ああ・・? キスされた、のか?」と気付いたくらいだ。 ついでにルルーシュが突然こんなことをしてきた理由も分からなくて。 20センチの距離を保ったまま待機しているルルーシュに、思わず訊いてしまった。 「・・・・、いまさら記憶の保管が必要か・・?」 途端、ルルーシュの眉間に大量の皺が寄る。 それどころか怒ったような貌でぷいとそっぽを向いて、踵を返して部屋から出て行こうとしたものだから、呆気にとられた。 何だというのだ、一体。 「ッ、・・ルルーシュ!」 ・・・けれど妙に焦りを感じて、思わず呼び止めてしまった。 ピタリと歩みを止める長身。その、「・・・・・・なんだ」と押し殺した声で呻ったルルーシュの、わずかにこちらへ向けられた右耳が赤く染まっていて。 再び、呆気にとられた。 「・・・・・・・ぇ・・」 記憶の保管が目的ではなかったことに気付いたのが、このとき。 私も案外鈍いのか・・? いや、そんなハズは・・・、と考察が脳内を駆け巡ったのも、このとき。 ついでに、ルルーシュの現状を確かめたくて正面に回ったのも、このとき。 そして、おそらく恥半分、屈辱半分が理由で真っ赤になったルルーシュを見た正直な感想が、これだった。 「・・・お前、可愛いなぁ」 そう零した途端に、これでもかというくらい貌を歪めて私と眼を合わせようともしなかったルルーシュがいきなり殺気立った眼でこちらを睨んできたものだから、 余計に笑いが込み上げてきた。 するりとルルーシュの首に両腕を絡めて、ちょっと強引に屈ませる。 この男、また少し背が伸びたんじゃないだろうか・・・生意気な。 おかげでこちらは精一杯背伸びをするハメになったが、それでも我慢して、せいぜい蠱惑的に感じられるように唇を重ねてやった。 軽く押しつけて、ほんの気持ち程度に食んで、そっと離す。 伏せていた視線をゆっくりと上げてルルーシュに合わせると、予想通りすぐに食らいついてきた。 ・・・・・まぁ、予想通りというか・・・ある意味ねらい通りなのが。 「・・ふぁ、・・・るるぅ、しゅ・・ッ」 物云わぬ男の熱い唇は、雄弁に語る。 こんなの、「好きだ」と云っているようなものだ。 それでも云わないのは、いまさら言葉にしなくても伝わると思っているからなのか。 関係を決定的に変えてしまうことを恐れるから、云えないのか。 それとも
2010/11/29 up |