体温を感じない距離




 くしゅん、と。
 背後から聞こえた声ならぬ声に、ルルーシュは心底驚いた。
 人であれば誰だってくしゃみくらいするだろう。いや、人どころか。イヌやネコだってする。
 なのに、背中合わせで寝台を共有しているこの女に限っては、特異的な身体故にそういったものとは無縁だと思い込んでいた。
 ルルーシュは気にならない程度だが、少し肌寒いだろうか。
 だからといって暖かい毛布を用意してやろうだとか、身を寄せてやろうだとかは思わないけれど。
 しかし、不自然なまでに身じろぎしないルルーシュが起きているのはバレバレで、無視を決め込むのもバツが悪かった。


「・・・・寒いか?」


 だから、素っ気なく尋ねた。
 しんと静まり返った深夜の部屋では、充分すぎるほど聞こえただろう。
 その証拠に、C.C.がボソリと返した呟きも何の問題もなく耳に届いた。


「・・・・・別に」


 いつもなら気付かないような、ほんの僅かな動揺すら分かるほどに。


「・・・、・・・・」


 普段まったくC.C.に気を遣うことがないとはいえ、この反応はこの反応で失礼だ。
 今にも舌打ちしそうになりながら、ルルーシュは空調のリモコンに腕を伸ばした。
 設定の室内温度を1度だけ上げる。瞬間的に部屋が暖かくなるわけではないが、それでも一切何もしないよりはマシだろう。
 明け方は冷え込むからな、とルルーシュは心の中で自分自身に言い聞かせる。
 することだけしてすぐに目を閉じれば、背後でC.C.が微かに身じろいだ気配を感じた。




 C.C.が礼を云うことはない。
 云われる筋合もない。
 それがふたりの日常であり、正常なのである。












『体温を感じない距離』


1期ナリタ前くらい
でも、お人よしなルルーシュ




2010/10/21 up