キス ミー 「ね、C.C.はどこにキスされるのが好き?」 ニコニコ、と。 まるで春の日差しのような、花のような笑顔を浮かべたユーフェミアからの突然すぎる言葉に、C.C.はピザトーストを咀嚼することすら忘れて親友の顔をまじまじと見つめ返してしまった。 晴れあがった青空。 芝生が心地よい中庭。 まったりとした昼休み。 これだけの好条件がそろえば誰だって外で昼食をとりたくなるわけで、まわりには同じように弁当を広げる生徒のグループがいくつもある。大抵のことなら他人の目や耳など気にも掛けないC.C.だが、質問が質問なだけに不用意な返答は避けるべきだと賢明な選択をした。 そもそも、意図が読めない。 いつだって全力投球のユーフェミアのことだから、意図もなにも、ただ純粋にC.C.の意見を聞きたいだけなのだろうが。 「そういうお前はどうなんだ?」 そんな彼女がひとつ上の学年の枢木スザクと付き合いはじめたのは半年くらい前だっただろうか。基本的に全寮制であるアッシュフォード学園でも例外というのはあるもので、その例外である 親友と毎日手を繋いで登下校している男の顔を思い出しながらC.C.が訊けば、ユーフェミアは極上の笑顔を見せた。おそらく、彼女がいつも枢木スザクに見せている笑顔。 「もちろん唇もいいけれど、頬にしてもらうのもしあわせな気分にならない?」 「・・・、・・そうかもな」 微妙ながらも肯定を返してしまったのは、ユーフェミアがあまりにうれしそうだったからだ。 「でもね、この話をするとみんな私のことヘンって云うのよ」 「・・・、・・勝手に云わせておけ」 好き嫌いほど主観にまみれたものはなく、他人に左右されるべきことでもない。だからユーフェミアの好みを否定する気はサラサラ起きなかったのだが、付き合って半年になる彼女から「ほっぺ ちゅーが一番好き」と云われた枢木スザクにC.C.は心の中で合掌した。 次にくるであろう追究の声は予想済みである。 あとはそれをどうやって上手く躱そうかと考えを巡らせながら、周りで聞耳を立てている生徒たちの視線を無視してC.C.はピザトーストを頬張った。 ファッション雑誌というものは大きくて、意外と重いもので。 腕の疲れとともに集中力も途切れたC.C.は、ユーフェミアが貸してくれた雑誌を閉じてローテーブルへと戻した。 チラリ、と見遣ったのは、ソファーの反対側で君主論なんて読み耽っている男 マリアンヌによって引き合わされて以来の付き合いなので、出会いは10年以上も昔である。そのときから許婚同士であったのに、C.C.が24歳になる誕生日に互いに恋人がいなければ結婚しよう と改めて約束を交わしてしまったのが8年前で。それまでは許婚という関係に縛られないはずであったのに、今では彼氏彼女であると学園中のみんなに誤解されている、奇妙な関係の片割れだ。 C.C.はもぞもぞとソファーの上を這うと、その片割れの肩に頭を乗せてみた。 「なんだ?」 「キスしろ」 「・・・唐突だな」 面倒そうな声を出しながらも、ルルーシュの手はC.C.の頭をポンポンと軽くたたく。その合図にC.C.が顔を上げたところで大きな手が若草色の前髪を掻きあげ、男の唇が額にやわらかな感触を落としていった。 ただ、それだけの接触。 身長差が活かされる拙いキスは幼いころの名残で。 「・・・どこ、と・・訊かれてもなぁ・・・」 額と答える以外にキスをされた記憶がないのだから、好きもなにも答えようがない。 これが高等部のベストカップルと謳われるふたりの実体なのだから、笑い話もいいところだ。 この関係が嫌、というわけではないのだけれど。 「・・・? なにか云ったか?」 「空耳だ」 これではユーフェミアのことをどうこう云えないな、などと考えながら再びルルーシュの肩に頭をあずけて、C.C.はそっと瞳を閉じた。
『キス ミー』 幼馴染かつ許婚パラレル 突発すぎて続かないwww 2010/ 3/29 up |