縁は異なもの




 見知らぬ部屋だった。
 簡素な鏡台とスツール、そしてクィーンサイズのベッドがあるだけの殺風景な部屋だ。
 その鏡台の前には、細い身体にバスタオルを1枚巻きつけているだけの女。
 ベッドの上で所在なく縮こまっているのは、俺。


 ・・・いまいち、状況を把握しきれていない。




「ひとつ訊いておきたいんだが・・」


 鑢で爪を磨いている女は淡々と言葉を紡ぐ。
 アップにした翠色の髪が幾筋か解れていて妙に艶かしく見えるが、さらに眼を引くのは項から肩、二の腕に浮かぶ紅い痕。まるで新雪に散った寒椿だが、 それを散らしたのは俺なのだと、俺自身には覚えがないのに状況がそうだと叫んでいて、落ち着かない。
 昨晩の行動をどれだけ思う出そうとしても、頭に鈍い痛みが走るだけで。
 悪友に付き合わされて酒を飲み始めたところまでは覚えているが、酒の名前までは思い出せない。
 ・・・・・・どれだけ飲んだというんだ、俺は・・。




「わたしのどこを気に入って、こんな処に連れ込んだ? ・・・顔か? 身体か?」




 口許は笑っているのに、しかし笑っていない琥珀色の瞳が、鏡越しにこちらを一瞥する。
 その態度に、言葉に、例えようもなく腹が立った。
 羞恥を感じている余裕すらない。


      知るか、そんなこと」


 しかし、声を発した瞬間に両側頭部を圧迫されるような痛みを感じて、思わず顔を歪めた。普通に正面を向いていることすらままならない。
 それでもこれだけは言ってやりたくて、横目で睨むように女を見遣る。




「その性格を気に入ったんじゃないことだけは確かだと思うがな」




 思いきり皮肉を込めて答えてやると、しかし女はひどく楽しそうに微笑んだ。
 ふわりと、蕾が綻ぶように。
 それがあまりに意外で、呆気にとられて        不覚にも、その貌が心に焼き付いてしまった。












『縁は異なもの』


惹かれていく過程が楽しい




2009/ 3/31 up