お兄さまっ・・!」


 逢いたかったです・・と続けられた声は、感極まっているようにも、苦痛を押し殺しているようにも聴こえた。心細い思いをしていたのであろう 最愛の妹に、愛しさが募る。華奢な身体を抱きしめれば、震える腕が縋りついてきた。
 しかし         ・・・


「・・・・・ナナ、リー・・?」


 妹との再会とは絶対無縁であるはずの異物感を腹に感じて、ルルーシュの額に汗が滲んだ。
 思わず、動きが鈍くなる。


「お兄さま・・・ひとつ、お願いがあるんです」


 ナナリーはルルーシュの胸に顔を埋めたままで、その表情は窺い知ることができない。
 だが、腹に突き付けられた硬質の物体は、間違いなく         ・・・








「C.C.さんを、こちらに・・・引き渡してください」






                 銃、だ。






「・・・・・・・・・・っ・・!?」


 信じがたい展開と突然出てきた『C.C.』の名に、ルルーシュの反応は遅れた。
 ナナリーが、あの心優しいナナリーが兄に銃を突き付けて、C.C.の身柄を要求している!?


(っ、・・・どんな悪夢だ・・!)


 ルルーシュは内心で悪態を吐いた。
        しかし、これは現実だ。
 腹に押し当てられた銃の硬さが声高に主張している。


「ナナリー・・・なぜ・・?」


 それでもルルーシュは認めたくなかった。
 血に汚れた道を辿るのは自分だけで充分だと信じているからだ。      いや、むしろ最愛の妹が関与しないようにと、いつだって彼女を 残して戦場に立っていた。
 なのに・・・・・




「お母さまが殺された、あの事件に・・・C.C.さんは関わっているんです」


 憎しみまでもが滲む声色でナナリーは話す。


「C.C.さんと出逢わなければ・・お母さまが亡くなることはなかったって・・」


 惨劇を夢に見て魘されることはあっても、見殺し同然に放置した父はもちろん、実行犯や黒幕に対して怒りを顕わにすることがなかったナナリーが明らかに示した感情。
 正直なところ、話の内容以上に衝撃を受けていた。


「ナナリー・・お前・・・」
「脅しではありません。C.C.さんを、こちらに」


 銃口の硬さが、より一層迫る。
 それでもしばらく沈黙を守っていたルルーシュは、不意にナナリーを抱きしめる腕に力を込めた。
 身を捩ろうとする痩身の耳許に唇を寄せて、そっと囁く。
          撃ちたければ、撃つといい・・と。


「っ、・・・・・そんなにC.C.さんのことが大切なのですかっ!?」


 悲鳴に似たナナリーのくぐもった叫び声が胸に谺する。
 ルルーシュは無言で受け止めた。言うべきことはたくさんあるのだろうが、そのどれもが的確な言葉にならないことを知っているからだ。
 C.C.は渡せない。
 難解な女だが、いつだってルルーシュの味方でいた存在である。


「どうかな・・・でも、お前になら・・討たれてもいいと思っているよ」


 彼自身、ナナリーに話して聞かせられないほどの悪行を繰り返してきた。
 これがその報いであるならば、ルルーシュは受け入れるしかない。
 ナナリーにつらい役目を負わせることだけが、唯一の心残りだけれど・・・


      おにい、さまっ・・!」




 トリガーに掛かる細い指に力が籠められたことを、ルルーシュはなぜか肌で感じていた。












『NIGTHMARE』


ナナリー V.S. ルルーシュ で、ルル→シー




2009/ 1/14 up