※ 『皇道』ネタバレと妄想・捏造しかありません、ご注意ください!!







































復活祭sss パターン3   【私的皇道補完】



 ゼロ・レクイエムは止められないとC.C.は解っていたのだ。
 行動の結果を受け止め、自ら罪を贖おうと決めた少年たち。罪には罰が必然であり、彼らを翻意させる権利も方便もC.C.は持ち合わせていない。
 しかし、C.C.は望んでしまったのだ。彼女の共犯者たるルルーシュの生を。
 ルルーシュは自らのすべてを捧げる心積もりでいるが、ゼロ・レクイエムの本質は世界中の憎しみを『悪逆皇帝』に集め、その憎しみを昇華することで世界を平和へと導くものだ。必要なのはゼロが起こした奇跡という民衆向けの演出であって、ルルーシュが実は裏で生きていようが、世間に知られなければそれで成功なのである。
 だが困ったことにルルーシュは本当に死ぬつもりであるし、スザクは本当に殺すつもりなのだ。
 ゼロ・レクイエムを行う意義は理解できるし協力もするが、ルルーシュが死ぬという一点に於いて、C.C.は心の底から賛同できずにいた。
 その意思表示として揃いの正装を着用せずに拘束衣で過ごしてみたり、幾度となくゼロ・レクイエムの考え直しを促してみたけれど、少年ふたりはC.C.も呆れるくらい石頭で、結果は芳しくなかった。
 ゼロ・レクイエムは仕方がない。だが、ルルーシュの生命は助かるように運びたい。


 だからC.C.は最後の手段をとったのだ。


 目を付けたのはルルーシュのことを好きな人物である。それも、ルルーシュが秘めたどんな顔や真実を知っても変わらずにルルーシュの味方でいてくれる人物でなければならない。
 考えて一番に思い浮かんだのが、雨の中ルルーシュとキスをした少女だった。
 名はシャーリー・フェネット。
 連絡先はスザクの携帯端末を無断で拝借して調べた。なぜスザクのかというと、用心深いルルーシュの端末にはロックが掛かっていて使えなかったからである。そしてまず連絡先を手に入れたのは、さすがのC.C.でも共犯者ではない普通の人間、しかも直接面識がない人物を感知することはできないからである。
 斯くしてC.C.はシャーリーに電話を掛けた。無言のそれをルルーシュからだと勘違いして勢いよく喋り出したシャーリーに面食らいはしたものの、長距離かつ電波を介して道を繋げる作業に時間が掛かったC.C.としては変に時間稼ぎをしなくて済んだので楽と云えば楽だった。
 それに収穫もあった。シャーリーからルルーシュへの変わらぬ好意と協力の意思を確認できたことだ。
       彼女ならば、あるいは。
 ルルーシュとスザクに近すぎるが故にC.C.が出来ないことを、彼女ならば出来るかもしれない。C.C.の期待は膨らんだ。


 結果として、期待は裏切られたかのように見えた。


 超合集国参加のためにニッポンを訪れたタイミングで単身シャーリーと接触したC.C.は、シャーリーと契約を結ぶことに成功した。
 ルルーシュの見解では、ギアスはその者の願いが反映されるという。確かに、儘ならぬ世界に憤りを感じたルルーシュには絶対遵守のギアスが、凄惨な過去に傷付いたシャルルには記憶を書き換えるギアスが発現しており、あながち間違いではないのだろうとC.C.も考えている。
 だからこそシャーリーには近くルルーシュが死ぬことを先に伝えた。その上で問い掛けたのだ。

「ルルーシュを救うための力がほしいか?」

 この言葉に少女が飛びついたのは云うまでもなく、ギアスという名の王の力は少女に宿り、ルルーシュを好きな心優しい少女には大切な者の生命を救えるギアスが発現した。
 はずだったのだ。
 しかし契約を終えたシャーリーの瞳にギアスの文様は浮かばず、本人も何か変わった感じはしないと云った。
 C.C.は落胆した。それは少女も同じだっただろう。
 本当にごく稀にギアスが発現しない、もしくは時間が掛かる者が居る。シャーリーは前者かもしれないし、後者かもしれない。ギアスの開花時期も能力もC.C.には判らないし、本人も選べない。

「私、何の力にもなれないのかな・・」

 そう云って涙を流す少女を前にして、あるいはこれでよかったのかもしれないとそのときC.C.は思い直した。
 この心優しい少女がゼロ・レクイエムに巻き込まれることも、王の力で孤独へと追い込まれていくこともないのだから。


 だが、ギアスは確かにシャーリーに宿っていたのだ。


 彼女に発現したのは『心を保管する』ギアス。大切な者が死を迎えるときにその者の意識を自らの中に移し、集合無意識への帰依を阻止するのである。マリアンヌのギアスは自身の意識を他者へと移す能力だったが、その逆パターンだと考えれば解りやすいだろうか。
 C.C.はルルーシュが殺される瞬間を目撃してはいない。出来ることが何もないことを知っていたし、民衆の暴徒化を危惧したルルーシュが別行動を望んだからだ。
 しかしルルーシュを救えるのならばと、シャーリーはダモクレス決戦のときもフジヤマを臨めるところまで足を運び、ゼロ・レクイエムの現場にも駆けつけたのだという。
 シャーリーのギアスが発動したのは、まさにゼロ・レクイエムの瞬間だった。



 一本道の傍らに咲く野花が風に揺れる。空はどこまでも澄み渡り、遠くに臨む山々の青は鮮やかだ。
 ロバの背に揺られながら、C.C.は逸る気持ちを抑えるように殊更ゆっくりと道中を進んでいた。
 C.C.のあてもない旅。その途中、不意に届いた手紙にはさすがのC.C.も吃驚した。まずC.C.にきちんと届いた事実に驚き、差出人にまた驚き、その内容にもっと驚いた。
 シャーリーとジェレミアの連名で出された手紙にはゼロ・レクイエム時に発動したシャーリーのギアスと、ルルーシュの現状が綴られていた。
 いまルルーシュの意識はシャーリーの中で眠っているという。身体は主君第一のジェレミアが民衆から守り抜き、貫かれた心臓の治療を済ませてルルーシュの意識を戻す時を待っている状態らしい。
 その手紙を読んだときC.C.の中で生じた感情は、嬉しさと安堵感と、そして一抹の寂しさだった。
 ルルーシュの生を望んでいた。そのために秘密裡にシャーリーと接触して、ギアスまで与えた。それが実を結んでルルーシュと再会できる可能性が出てきたのに、ゼロ・レクイエムまでルルーシュの一番傍に居たC.C.やスザクがルルーシュの復活に関して蚊帳の外であったことがほんの少しばかり残念だったのである。
 手紙には時期的にも治療経過的にもそろそろルルーシュの意識を身体に戻す頃合だと思うと書かれていた。C.C.にも同席してもらい、サポートを頼みたい、とも。
 C.C.に否やはない。すぐにジェレミアのオレンジ農園へと目的地を変更し、こうして道中を進んでいる。

「・・・ルルーシュ」

 本当にもう一度逢えるだろうか。それとも二度と言葉を交わすことはないのだろうか。
 期待と不安が綯交ぜになった魔女らしくもない心中を抱えながら、C.C.は懐かしくも愛おしい魔王の顔を思い浮かべた。






2018/ 5/28 up