They vow




 この日、ふたりはある場所に来ていた。
 広大な湖の畔に建つ、ルルーシュの墓前。この場所だけはいつでも穏やかにふたりを迎え、公務に忙殺され続けて擦り減っていく心に安らぎを与えてくれる。 それはひとえに世界の喧噪から一線を画する自然の中に位置しているからだけではなく、故人がふたりに遺したさまざまな想い出と願いを感じやすい 場所だからなのだろう。
 感傷に浸ることなくこの場所でのんびりと過ごせるようになるまでには、ずいぶんと時間を要したものだが、その過程すらも愛おしく思えるようになったとき、 この場所は本当の意味で安らげる場所になった。どちらかといえば、少女の方が早かったかもしれない。




「C.C.さんは今、どのあたりを旅していらっしゃるんでしょう?」


 遥か彼方の空を見つめて、ナナリーは呟いた。ほんの少しだけ時間を作って秘密裏に皇宮を抜け出してきたものだから、服装はいつもの、ピンクを基調とした ドレスのままだ。


「・・・どうだろう・・」


 返事を返したのは傍らにいる青年だった。彼も世界の要人としての自覚がある所為か、隙一つなく衣装を身に纏っている。         が、亡き友から受け継いだ仮面は今、彼を戒めてなどいない。口調も偽りと演技によるものではなく、彼本来のものだ。
 それはナナリーが望んだこと。
 この場所ではスザクに逢いたいのだ、と。皇位に就いてからますます我慢を覚えた少女がどうしても譲らなかった願いだった。
 だからこの瞬間だけ、枢木スザクは生き返る。
 ナナリーと共にこの場所に立つときだけ、魔法のようにギアスは解ける。


「C.C.ならどこに居てものんびりと過ごしてそうな気もするけど・・」


 ルルーシュの剣と盾として共有した時間を思い返せば、少々投げやりに感じるかもしれない言葉が口を衝いて出た。だがそこには一切の悪気も悪意もない。 ただ、本心からそう思っている。
 ルルーシュが命を賭して作った世界とは、C.C.が穏やかに暮らせる世界でもあるはずだから。






 更なる前進に全力を尽くすことを誓いながら、ふたりは繋いだ手にそっと力を込めた。












『They vow』


『永劫回帰』設定、『心の中では、いつでも』より後の話
ルルーシュの生存を知らないふたりが交わす、幾度目かの誓い




2009/ 1/ 6 up