傍にいて




 一頻り泣いて、その後に脳裏を過ったのはこれからの身の振り方だった。
 計画と云えるような計画などなかった。どうせ独りなのだ、一所に留まることもできない身体であるし、ルルーシュたちが創った世界をゆっくり時間を掛けて見て回るのも一興か、 程度のことしか考えていなかった。・・・・というか、まだゼロ・レクイエム後のことなど考えたくなかったと云うべきか。とにかく、具体的な案が何もなかったことだけは確かだった。
 しかし、ルルーシュがコードを継ぐとなれば話は別である。
 悪逆皇帝として世界に顔を売っている以上、人目に触れる生活はまずできない。だからと云って完全に人と関わりを持たずに生活することなど、現代社会では到底無理だろう。 ルルーシュには何か妙案でもあるのだろうかと考えた矢先のことだった。


「C.C.、・・・お前、行きたい所はあるか」


 思い掛けない言葉に、C.C.の鼓動は跳ね上がる。
 それはどういう意図に基づく質問なのか。この先も一緒にいることが前提ということでいいのだろうか。まさか、ルルーシュがそんな風に考えていたなんて     ・・。
 動揺するC.C.に対し、ルルーシュは気付いた様子もなく何やら思案している。
 かと思えば、終いにはこんなことを云い出した。


「ギアスやコードに関わる場所に覚えは?」
「・・ハァ?」


 ギアス? コード?
 なんだそれは。
 あまりにひどい気分の乱高下にC.C.は唇を噛む。
 鈍感だ甲斐性なしだ朴念仁だと散々罵ってきたが、ここまでとは。いや、ある意味非常にルルーシュらしいけれど、C.C.は笑えなかった。
 C.C.が有するコードやギアスの知識を欲しているだけなのだ、ルルーシュは。
 必要とされていることに変わりはないが、もっと別の、特別な理由を求めていた。 そんな自分を自覚させられ、同時に期待外れだったことを思い知らされ、C.C.は二重でショックを受ける。けれどルルーシュを失わずに済むことは嬉しくて、眉根は寄るのに唇は歪に緩んだ。


「嚮団の跡地ならいくつか知っている」


 そう告げると、案の定ルルーシュは喰い付いてきた。挙げた候補地のうち情報が残っている可能性や場所を総合的に考えた結果、行き先はギアス教会で落ち着いて、 ルルーシュはまた一人で思案を始めてしまう。それを寂しいと思うのは我儘だろうかと、C.C.は柄にもなく遠慮して見守っていたのだが、積もり積もった感情が溢れ出て、 まるで吐息のように自然と言葉が漏れていた。




       また二人だけの共犯者、か・・」




 ルルーシュが不老不死になることは、たとえスザクやナナリーであっても云えない。新たに共有する二人だけのこの秘密の存在は、出逢ったばかりの頃の共犯関係を思い出させた。
 共犯者      それは事実を述べたに過ぎないが、半分以上は自分自身に対する皮肉だ。『何を馬鹿な期待をしていたんだ』『所詮私たちはそれ以上でもそれ以下でもないだろう』という。
 やはりルルーシュは共犯者という言葉に疑問を持つでもなく、しかし片眉を上げる。


「なんだ、契約が必要か?」
「いや・・・」


 何を云い出すかと思えば、と呆れたが、鼻で笑う気力も湧かなくてC.C.は俯く。
 もう誰とも契約を交わすつもりなどない。
 契約は死へと繋がる負の鎖だ。しかしC.C.が本当に望んでいるのは死ではないと、他でもないルルーシュに気付かされた。
 だから、約束があればそれでいい。他のことは望まない。
 たったひとつの願い、それは        ・・・












『傍にいて』


『永劫〜』前編の夜の出来事




2013/ 2/26 up