愛執 それは、ダモクレスを落として日が浅い頃だったか。 たった一度だけ、ルルーシュは云った。 繋がったまま、意識が朦朧とするC.C.を見下ろして。大きな手をC.C.の薄い腹に置いて。少し、寂しそうな貌で。 このときほど、C.C.が自分の身体を怨んだことはない。 確かに、死ねない身体をずっと呪わしく思い続けてきた。しかしどれだけ呪っても死ねないものは死ねず、往き着く果ては常に諦めという名の虚脱だった。 しかし、こればかりは怨んでも怨みきれない。 新しい生命を宿すことのない、その身体を。 そう、C.C.は願ってしまったのだ 子どもが生まれたら、何に代えてもその子を愛しむだろう。 外見が変わらないC.C.が子どもと一緒に過ごせる時間はそう長くないだろうが、それ故にC.C.は遠くからずっと見守っていくだろう。 子に孫が生まれ、孫に曾孫が生まれ、 それはC.C.の生きる理由になる。死にたいとは、きっともう思わない。 ただ、誰の子でもいいというわけではないのだ。 ルルーシュでなければ。ルルーシュの子だから、ほしいとC.C.は願った。 己の血を怨むルルーシュには、それを後世に繋げる気などないだろう。しかしあの状況であの言葉となれば、父親を他の男で想定しているとは到底考えられない。 何より、あの言葉はC.C.のこれからを想ったが故に出た言葉だったと解っているからこそ、C.C.はひどく歓喜し、それ以上に絶望した。 存外逞しい身体に縋りついて咄嗟に涙を隠したC.C.を、ルルーシュはどう思っただろうか。 つむじに落とされた唇になおさら涙が溢れて、しかし昂ぶりを取り戻したルルーシュがゆっくりと再開した律動に、幸いとばかりに涙声を嬌声へすり替えて、C.C.は闇夜に溺れた。 救いを求めた手が掴むのは空虚ばかりで。 ルルーシュがどれだけ握り締めてくれても、完全に満たされることはなくて。 やはり、C.C.に新たな生命が宿ることはなかった。 ルルーシュが生きた証を遺したくて、あれだけ心を痛め、涙したというのに。 ど う し て 今 、 そ の 男 が 目 の 前 に 立 っ て い る の か 。 C.C.は耐え切れず、身体を背けた。身体の内側から怒りが湧き上がってくる。 コードを継承していると、何故話してくれなかったのか。 この男にとって自分はどれだけの価値があったのだろうか。 遺す必要のない子どもなど、初めから望んでいなかったのか。 もう何に失望してよいのかすら解らず、視界が涙で歪む。正面に回ったルルーシュが息を呑む気配がして、よく知る感触に身体が包まれても、C.C.は応えることもせずに 涙を流し続けることしかできなかった。
『愛執』 『深愛』と対。 C.C.はどうしていいか解らなくなると思う。 2012/ 9/ 3 up |