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針路は北に 「おい」 老夫婦からの『預かり物』を無事渡し終え、村を出てから30分ほど経っただろうか。 足取りが軽いC.C.の背を眺めながら歩いていたルルーシュの心中を過ったのは一抹の不安だった。 目的地は決まっている。だが、道案内はC.C.に一任してある。 その、主導権が手元にないどころか目的地の位置すら知る由もない状況に、苛立ちにも似たもどかしさが募っていくのだ。それはもう、果てしなく。 「本当にこの道で合っているのか?」 ゼロレクイエムと並行して完遂されたコード継承を誰にも・・それこそスザクやナナリーにも告げず日本を出国したふたりがまず向かった先はブリタニア本国だった。 帝都の消滅・行政システムの機能不全に続き、国の絶対的な主導者たる皇帝が討たれたブリタニアは混乱を極めている。このような非常時には犯罪者の密航が増えるため 警備体制は強化されるのだが、それ以上に一般の渡航者も増えるのだ。特に渡航規制が解除された直後はその数が爆発的に膨れ上がり、厳戒態勢にも関わらず隙が生じる。 その瞬間を見逃さず、ルルーシュとC.C.は偽装パスポートを使って日本を脱出した、というわけだ。 しかし、ブリタニアは経由地に過ぎない。安全面の問題としてまずブリタニアに渡っただけであり、ふたりが目指す場所はここ、大西洋を隔てたEUの領土内にある。 「ん? 大丈夫だろ」 人々から忌み嫌われていた、その場所。 「だからその自信の根拠を・・」 コード・ギアスの紋章を掲げる、古い建物。 「あの山に見覚えがある」 ぴっと前方を指さすC.C.の脳裏には、コードを無理やり継承させられた、あの教会が鮮やかに思い描かれていた。 しかし・・・・・ 「お前・・・この辺りに居たことは?」 「ないな。こんな、人が住んでいた気配もないようなところ」 「・・・・それでよく『見覚えがある』なんて言えるな・・」 蟀谷に指を押し当て、ルルーシュは呻いた。 景色などというものは、刻の流れとともに姿を変えていくものである。山だって活きていれば形を変えるし、距離や方角、季節などによっても見え方は変化する。 しかもC.C.の場合は『数百年前の話でした』、なんてことも普通に考えられるので、記憶と噛み合わない部分も出てくるはずなのだ。 やはり少しは情報収集をするべきか・・と、ルルーシュは計画破綻を前提とした対策を立て始める。 そのとき、いつもと変わらない透明な声がルルーシュの耳に届いた。 「とりあえず、もっと北だ」 「・・・・北?」 いつの間にかルルーシュへと向き直っていたC.C.は、問い返す声に殊更大きく頷いた。そしてくるりと踵を返すと、また歩き出す。 ルルーシュは頭の中でEU諸国の地図を広げた。自分たちの大まかな現在位置と、山脈など目印となる地形の位置関係と、太陽の動きを考慮しておおよその方角を割り出せば、 確かに北へ進んでいるようだ。 「北、か・・」 ただでさえ夜の冷え込みが厳しいというのに、この先どれだけ北上することになるのか予想もできないのは精神的に負荷が掛かる。 村で新たに調達した毛布を詰め込んだ所為でパンク寸前の鞄が今この瞬間により一層重くなったと感じていることがいい例だろう。 しかし目的地の変更はできないし、する気もない。 だから今はC.C.の先導に従って道を往くしかないのだ。 不老不死になったからには、C.C.のように神経が太くなければいけないだろうか・・と、ルルーシュは冗談抜きで考えてしまった。
『針路は北に』 目的地は、C.C.のはじまりの場所 2008/10/20 up |