ナイトオブラウンズへと昇進した少年が放った黒い布は、バサリと音を立てて地に落ちた。
 黒の騎士団の紋章が刻まれた、特別な黒衣。痩身にぴたりと沿うよう仕立てられたそれは、主を失った所為か、ひどく儚く地に伏している。
 仮面の男の心中には、漣がひとつ。


「これが何なのか分かるかい? ゼロ」


 そして、答えが分かりきっているいる質問に、またひとつ漣が立った。
 まったく意識しないまま、仮面の内の顔が盛大に歪む。


 分からないわけが、ないのだ        黒衣の主も、その黒衣だけがここにあることの意味も。


『・・・・・・・彼女はどこにいる』
「僕たちの、手の内に」
『答えろ、枢木スザク』


 びしり、と、明らかに場が凍てついた。初めから剣呑とした雰囲気を纏っていた空気は、さらに重みと息苦しさを増して周囲を圧迫する。 できれば関わりたくない、と、そんな感覚を抱かせるのには十分すぎるほどに。
 しかし、純白の騎士服を纏っている少年の表情に変化はなかった。冷徹な光を浮かべる碧色の瞳はまっすぐに黒の反逆者を捉えたままだ。
 飛ばす殺気は、本物。両者とも引けを取らず、だからこそ危うい均衡を保っている。
 だが、その均衡に罅を入れたのはナイトオブセブンの言葉だった。
 曰く、「彼女はもう、君の下には還らない」、と。
 ゼロと呼ばれた男から発せられた殺気に、剣呑さと現実味が増す。


『いいや、返してもらろうか』
「それはできない。還らないと決めたのは彼女自身だ」


             さようなら。


 枢木スザクが口にした言葉は、どこか聞き覚えのある言葉だった。
 女のふてぶてしい声色が、彼女をよく知る男の脳裏を掠める。


「君に伝えてほしいと頼まれた。君は見放されたんだ。拠り所としていた、彼女からも」


 瞬間的にカッと頭に血が上った。今度こそ仮面の男はその怒りを知覚する。
 そして同時に、嫌悪感を抱くほど思い知った。
 心のなかに在る、彼女の       圧倒的な大きさに。


「すべてを受け止めてくれる存在の喪失を、君も存分に味わうといい」


 空々しいまでに乾いた声があたり一面に響く。
 しかし、流れるように続いていた言葉の応酬はそれ以上動く気配を見せない。




 まるで仮面の内を見透かしているかのように、枢木スザクは冷たく嗤った。
























本当に大切なものは、ったときに真価が解る












『LOOT』


ゼロ v.s. スザクで、ルル→シー




2008/ 9/16 up