果てしなく馬鹿な男




 まったく忙しいヤツだと内心呆れながら、C.C.はルルーシュをぼんやりと見つめていた。
 ゼロからルルーシュ・ランペルージに変わっていく男は、すぐにでもエリア11へと飛び立ちそうだ。戻ってくるときには是が非でもタバスコを持ってくるよう 言い含めなければ・・そんなことを考えながらC.C.は瞼を閉じる。 ぬいぐるみの心地よさに身体中の筋肉がほどよく弛緩して、今ならばぐっすりと眠れそうだった。
 が、思わぬ邪魔が入る。
 共犯者たる男の、どこか不機嫌そうな低い声。
 C.C.がしぶしぶと瞼を押し上げれば、ルルーシュの視線とぶつかった。負けじと不機嫌を装って、「なんだ」と返事をしてやる。しかし、ルルーシュは ぴくりとも反応しなかった。


「お前は・・なぜ神楽耶に賛成したんだ?」
「神楽耶?・・・・・あぁ・・だがお前も賛成したじゃないか、心の力とやらを理由に」
「だがそれは俺の考えであって、お前の考えじゃないだろう?」


 真面目な表情と、外れない視線。ルルーシュは至って真剣だ。
 しかし、だからこそ男に対する呆れは募る。


「考えてみろ、ルルーシュ。玉城と政略結婚させられそうになったナナリーが、絶対に嫌だと言って泣いていたら、お前はどうする?」
「断固として阻止するに決まっている」


 即答だった。
 予想通りの反応に、C.C.はニヤリと笑みを零す。つまり、そういうことだ、と。
 ルルーシュは顎に右手を当てながら、思案顔になった。会話の中身を反芻・分析しているようだが、かなり納得できる段階まで達しているらしく、その表情には 険しさが見られない。やはりナナリーを引合いに出すと落としやすいな、などとC.C.が考えていると、しかし次の瞬間にはルルーシュの顔が一変して、怒りを顕わにした。


「おい、はぐらかす気か」


 お前には天子を庇護する理由がないだろう。そう言って眉を吊り上げるルルーシュは、C.C.がわざと外した回答に気づいたのだ。
 そこまできちんと理解できて、どうしてルルーシュは女心というものを理解できないのだろうか。
 C.C.はますます呆れる。


「お前は賢い男だが、果てしなく馬鹿だな」


 だから、思わず口を吐いて出たのはそんな言葉だった。
 それに対し、ルルーシュは中途半端に言葉を詰まらせる。口を横に引き結んだまま反論してこないのは、初めに疑問を持ちかけた落ち目があるからなのだろう。
 結局、C.C.の考えが読めるか読めないかは、ルルーシュの問題なのだから。


「それで? 私の言動を気に掛けるなんて、意外と可愛いところもあるじゃないか、坊や」
「ふん。計画に支障があっては困るからな」


 言い切ったルルーシュは、どうやら本気のようだった。薄く笑んだその顔を見れば分かる。無表情を貫きながら、C.C.はさらに呆れていた。
 特別だと想う者のそばに在りたいと願う気持ちを理解するくらいの感性はC.C.にだってあるのだ。
 好みじゃない相手と一度心中してみればいい、とC.C.は考えた。そうすればさすがのルルーシュだって、それがどんなに苦痛であるか身をもって理解するに違いない。


「神楽耶に同意した理由が解るようになったら、『坊や』の称号は取り下げてやるよ、ルルーシュ」


 可能性は無に等しいけどな、という言葉はかろうじて呑みこんだ。 僅かに眉を寄せながら真面目に考えはじめたルルーシュを見ていれば、停滞気味の気分も少しは晴れる。




 立ち去る気配を見せない共犯者に、C.C.は小さく安堵感を覚えていた。












TURN11より


そっち方面の以心伝心はルルシーでも難しいと思います(笑)




2008/ 6/26 up