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ルルーシュ・ランペルージはいつもに増して疲れていた。 エリア11を侵略国ブリタニアから解放しようと活動している武装集団・黒の騎士団を率いるゼロという裏の生活が今の彼を圧迫しているのだ。 騎士団の活動が活発になればなるほどエリア11在中のブリタニア軍は弱っていくが、同時にルルーシュ・ランペルージも弱っていく。 目下最大の悩みは、極度な睡眠不足だった。 「おかえり、ルルーシュ」 そして今日もなんとか学生の務めを果たしてきたルルーシュを迎えたのは、共犯者であるC.C.。 彼女から掛けられた言葉は元来であれば労いの意を含むはずなのだが、ベッドにだらしなく転がった状態で言われても嬉しくないというものだ。加えて、今朝の暴挙に 対する苛立ちがまったく薄れていないルルーシュは返事すらせずに鞄をデスクに置いた。 “携帯の電源を切るなんて、一体どういう神経をしているんだお前はっ･･！” さすがのルルーシュも一瞬は時計の方を疑った。狂っているのではないか、と。 ひやりとした感覚を思い出したルルーシュは内心で舌打ちをした。そんなことを思い出している場合ではない。すぐにでも騎士団のアジトに行き、情報を洗い直さなければ ならないのだ。 上着のポケットから携帯電話を取り出してデスクに置いた。脱いだ上着は椅子の背もたれに掛ける。そしてシャツのボタンをいくつか外したところで ルルーシュは気が付いた。 横から伸びた白い手が、デスクに置かれた携帯電話に狙いを定めていることに。 「お前っ･･！」 C.C.が通信機器を欲する理由などひとつしかない。危機を悟ったルルーシュは咄嗟に阻止しようとした。しかし･･･。 「これでも不自然ではないようにお前の帰りを待ってやったんだぞ」 「っ、･･･だめだ、もう出掛ける」 「なら、騎士団のトレーラーの方に･･」 「莫迦かっ！」 タッチの差で勝利したのはC.C.だった。 嬉々としてピザ屋にラヴコールをしようとする彼女の手から携帯電話を奪取するべくルルーシュも奮闘しているのだが、くるくると逃げるC.C.の身のこなしは軽く、 一向に捕まえることができない。 C.C.に振り回されてばかりだと、そう考えてしまったルルーシュの気分は横這いから急降下へと様変わりした。反比例して、怒りは爆発的に増大する。 そして耐えきれずに怒りの声を上げようとした、そのときだ。考えなしに後退していたのだろうC.C.はベッドに躓いて、そのままベッドに倒れ込んでしまった。 小さく零れた悲鳴が意外と可愛らしいものだったことはこの際どうでもよくて、ルルーシュは携帯電話を取り返すという目的を果たすことだけに集中する。 C.C.がベッドに、しかも仰向けに倒れたのは好都合だった。上体を起こす前に覆い被されば、下にいる者はろくに動けなくなるのだ。肩を押し返してきた腕もなんとか 捩じ伏せて、ルルーシュは携帯電話に手を伸ばす。しかしC.C.はC.C.で限界まで右腕を伸ばして携帯電話を取られまいと必死だった。 「諦め、ろ･･ルルーシュ･･っ！」 「お前こそ諦めたらどうだっ！？」 「嫌だっ、今日はまだ何も、口にしていないっ」 それはつまりそれだけ寝呆けていたと宣言しているようなもので、ルルーシュはさらに苛立った。 その怒りの所為か、今この時間こそがルルーシュの最も嫌う無駄な時間だということに彼は気付かない。そして一方のC.C.もブドウ糖不足の所為か、 渡したくないのであれば携帯電話は胸元に抱きこんだ方がルルーシュに対して有効的であることに思い至らなかった。 幼子のような意地の張り合いは続く。 「･･････････お前にも責任はあるからな･･」 前触れもなく驚いたような表情を浮かべたC.C.はすぐにその表情を苦々しいものへと変化させて、ぽつりと吐き出した。 その意味深な言葉に疑問を抱きつつも、抵抗が弱まったのをいいことにルルーシュが携帯電話へと王手をかけた、その刹那。 馴染み深い音がルルーシュの耳を掠めた。 現実逃避をするどころか頭の中で瞬時に誰何してしまうのは、恐らくルルーシュがルルーシュだからなのだろう。いや、 もちろんルルーシュも少なからず嘘であることを祈りはしたのだが、しかし現実はそう甘くないのだ。 ルルーシュが悟った通り
a confused day ピザ事変 2008/ 9/19 up |